肥田舜太郎/鎌仲ひとみ著「内部被曝の脅威―原爆から劣化ウラン弾まで」


 今、この本を読み返しています。
「読み返している」というのは、6年前に出版され買って読んだ本だからです。
 当時、原爆症認定裁判で「被曝者の内部被曝をどうみるか」が大きな議論になっていました。その頃に発行され買った本です。
 「ヨウ素131が東京の水道水から…」という報道を耳にしたとき、「人工放射性物質であるヨウ素131は甲状腺へ濃縮される」というこの本の指摘を思い出し、手に取りました。
 著者である肥田舜太郎先生は広島で被爆され、長らく被爆者医療に携わってこられ、内部被曝についての研究を続けてこられた方です。


―――


 私はかつて、被爆体験を聞く集会や、地域の小集会などで、当時を体験されている方が奇妙な発言をされることにたびたび遭遇することがありました。
 

「(原子爆弾で)ひどい火傷を負った人は中には長生きする人もいる。でも原爆投下後に市内を歩き回った人や一見元気そうな人は必ず早死にする」
というご発言です。原子爆弾による内部被曝のことだったのです。


 内部被曝とは「放射性物質を体内にとりこみ、長時間にわたって身体の内側から放射線あびること」(本書)です。「恒常的に被曝することで遺伝子が傷つけられ、癌などを誘発するといわれてい」(本書)ます。
 「だがこのリスクを見極める研究者は少なく、人体への影響をめぐっては議論百出」(本書)です。


 よく言われる「この程度の放射線は一年間戸外にいて浴びる放射線と同程度の…」という比較についても本書では「自然放射線と人工放射線のちがい」として解説されています。
 また、同量の放射線でも、低線量放射線を長期間照射したほうが、高線量放射線を短時間照射するよりも細胞を大きく傷つける「ベトカウ効果」にも言及され、「ある一定量しきい値)以下の放射線被曝なら影響はない」とする日本政府の見解を様々な事実から批判され、原子力頼みのエネルギー政策にも警鐘を鳴らされています。


 3月27日(市長選告示日)号の「しんぶん赤旗」日曜版には肥田先生のコメントが掲載されているそうです。


 この「内部被曝」の問題を6年前「現代の問題、わが身の問題」として読めていなかった自分を恥じながら、今もう一度読み返しています。