黒い雨の体験(佐伯区八幡・Mさん男性)

藤本さとしさんと訪問したMさんから佐伯区(現八幡4丁目)の黒い雨体験を聞きました。
ご本人の了解の下、紹介させていただきます。
(文章は大西が直接ご本人から話を聞き、まとめたもの)


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 5歳のとき、今の自宅近く(佐伯区八幡)で黒い雨にあたりました。
 6日の朝、腹痛がするので近所のY医院に行きました。午前7時40分ぐらいだったと思います。
 もうすでに2人の患者さんが診察を待っていました。


 8時すぎ、突然「ビカッ」と光ったので、なんじゃあと思っていたらY先生が「こりゃー新型爆弾じゃ。広島はおおごとじゃ」と顔を曇らせておっしゃいました。
 その直後、「ガシャッ」と、ガラスがいっせいに割れる音がしました。


 先生は身体の弱い奥さんを台所下の防空壕にかかえて運びました。布団もそこに入れました。
 医院の廊下は割れたガラスでいっぱい。私は裸足でしたが、その上を走って外に出ました。


 小学生の集団が大泣きしながら道を歩いていました。どうやら光った時、小学生はいっせいに窓際に近づいたり、以前から割れて穴の開いていた窓枠から顔を出したりしたようで、その時に「ガシャッ」と来たもんだから、相当ガラスにやられたみたいでした。


 自宅に帰る途中、半燃えの紙や紙幣、書留のようなものが飛んできました。
そしてしばらくしたら急に空が真っ黒になりました。正確ではありませんが、9時半ごろだと思います。
 見たことのない、真っ黒な柱が降りてきました。「竜が降りてきた」と思いました。
その後、黒い雨の豪雨。5〜10分くらいだと思います。
その「黒い柱」は西から東方面へ移動していきました。


 私は剣道の稽古着のような白いものを身につけていましたが、ベショベショになりました。色は薄口醤油を濃くしたような色でした。
 数ヶ月間、その着物を洗って着ていましたが茶色の斑点だけは消えませんでした。


 近所の水田には多くのカエルが白い腹を上向けにふくらませて死んで浮かんでいました。
 ヘビも同様に死んでいました。


 その年は年末まで体調不良が続きました。
 黒い雨を浴びて4日後、血便。脱肛もありました。
 身体がとてもだるくてしんどかった。
 頭髪が抜けることが子ども心にショックでした。「ボソッボソッ」と抜けるんですから。洗髪するときに髪が抜けないよう、そーっと洗っていたことを憶えています。
 大人になるまで扁桃腺がよくはれました。


 「黒い雨」降雨地域が認定されるとかされないとか、そういう「境界線」そのものを設定すること自体無理があると思います。政府は直接「黒い雨」体験者から話を聞くべきです。